アメリカの心理学者、アブラハム・マズローが唱えた「自己実現理論」の一説の「マズローの5段階欲求」によると、人間の欲求は5段階に構成されていて、低階層の欲求が満たされると、より高い階層の欲求を欲するとされる。
人間が持つ欲求は5つの階層に分かれ、ピラミッドのように上へ行くほど狭まりながら連なっているとされ、近年ではビジネス上でも、マーケティングやマネジメントの局面で取り入られている。
あなたの仕事の目的は何ですか?報酬のためでしょうか。社会貢献のためでしょうか。
人によって答えは様々ですが、ビジネスシーンにおいての自己実現もまた、この考えに当てはまるとして、人財教育の現場で活用されている。
第一階層の「生理的欲求」は、生きていくための基本的・本能的な欲求(食べたい・飲みたい・寝たいなど)。
この欲求がある程度充たされると次の階層「安全欲求」を求める。
第二階層の「安全欲求」には、危機を回避したい、安全・安心な暮らしがしたい(雨風をしのぐ家・健康など)という欲求が含まれる。
この「安全欲求 」が充たされると、次の第三階層である「社会的欲求(帰属欲求)」(集団に属したり、仲間が欲しくなったり)を求めるようになる。
この欲求が満たされない時、人は孤独感や社会的不安を感じやすくなる。
ここまでの欲求は、外的に充たされたいという思いから出てくる欲求といわれる。
そして、次に芽生える欲求は、第四階層である「承認欲求(尊厳欲求)」(他者から認められたい、尊敬されたい)。
ここからは外的なモノではなく、内的な心を充たしたいという欲求に変わる。「尊厳欲求」が充されると、最後に「自己実現欲求」(自分の能力を引き出し創造的活動がしたいなど)が生まれるとされている。
人間には、特に意識していなくてもなぜか行ってしまう「習性」がある?電車が端の席から埋まっていったり、川沿いにカップルが等間隔で並んでいたり、という光景もその中の一つ。
そんな人間の不思議な行動の裏に潜む心理を研究。普段見かけるあんな現象やこんな現象にも、実は理由があった。
1つ目の大人の心理…普段素行の悪い人が、少し良いことをすると抜群に好感度が上がるのはなぜ?
不良少年が道端に捨てられた猫を拾う、というシチュエーションの漫画ってよくある?「ギャップ」があるほど好感度が上がるのは、なぜなか。
「例えば、見るからに品の良さそうな紳士が良いことをするのは、私たちの予想の範囲内の行動。
その一方で、一見ガラの悪い人がお年寄りに席を譲っただけで、とても良い人に見えてくる。
これを心理学では「対比効果」と言う。対比効果の実験では実験参加者をペアにし、コミュニケーションを取ってもらう。
ただ、実は片方の参加者が仕掛け人で、演技のトレーニングを受けている。
6回ほど仕掛け人の参加者と会う中で、①「ずっと良い人」②「ずっと悪い人」③「前半は悪い人で後半から良い人」④「前半は良い人で後半から悪い人」の計4パターンを演じ分けてもらったところ、一番好感度が高かったのが③「前半は悪い人で後半から良い人」だった。
最初からずっと良い人よりも、途中から良いイメージになる方が好感度が高い。合コンでも使えそうなテクニック!
「いやいや、何度か会う中で印象を変えることで効果が現れるので、1回目の印象が悪いと次はないような場合や、1回しか会う機会が無い場合はとてもリスキーで注意が必要。」
2つ目の大人の心理…どうして嫌なことは、嬉しいことより忘れられない?
嬉しい思い出よりも、嫌な思い出の方が鮮明に覚えているもの。
これはなぜか?
「人間の情報処理というのは、心理的側面に影響を受けやすい。ネガティブ(否定的)な体験は、また次に同じようなことを経験しないように、脳が詳細に情報を処理する。
逆に、楽しいことは自分にとって危険ではなく、細かな部分まで情報処理されないので、ふわっとした記憶になりがち。
心理学的には、前者は「精緻な情報処理」、後者は、「概略的情報処理」と言う。
情報処理というのは、具体的にどういうことか。
「例えば、話の内容、電気やファンの音、音や光、温度、湿度といったあらゆる内容を人の脳は記憶しようとする。
「楽しい時は、すぐに時間が過ぎる」とも言うが、楽しい時は、その体験だけで満たされてしまっているので、先述したような細かな情報には注意が向かない。
反面、退屈だったり、嫌な時は周囲の全ての情報に注意が向きやすく、脳が神経質になっているため、なかなか時間が経たないように感じる。
他にも、交通事故の時ってスローモーションのように見えると言う。
あれも、脳がネガティブなことだと判断して、あらゆる情報を集めて危険に対処しようとしているからだ。
基本的に脳は良いことよりも、リスクを回避する方向に働きやすい。
だから、嫌なことは細部まで覚えていて、ついつい根に持ってしまったり、落ち込んでしまうけれど、楽しいことは、ぼんやりとしたイメージでしか記憶に残らない。
3つ目の大人の心理…やってしまった後悔よりも、やらなかった後悔の方が長引くのはなぜ?
やってしまった後悔は、時間とともに忘れるが、やらなかった後悔は、ずっと尾を引くような気がする。みなさんにも、そのようなことがあるのではないか。
いいところに気が付いたね。実は、心理学では後悔が2種類あると考えられている。
やってしまったことに対する後悔で「行為後悔」と、やらなかったことに対する「非行為後悔」。
行為後悔は、もう結論が出てしまっているので反省もしやすい。一方で非行為後悔は、こうしていたら…、ああしていたら…、という思いがどんどん湧き上がってくる。
これを、事実に反していることを仮想すると書いて「反実仮想」と言う。これが、やらなかった後悔が長引いてしまう原因だ。」
4つ目の大人の心理…匿名だと、批判や攻撃的な言い方をする人が増えるのはなぜ?SNSやインターネットが普及している現代、匿名での批判的なコメントに悩まされている方も多いのではないか。
ミルグラムが行った一連の「アイヒマン実験」というものをご存知?
この実験の中で被験者を先生と生徒役に分け、先生役から生徒役へ問題を出すというものがある。
先生役は、生徒役が不正解を重ねるたびに徐々に強い電気ショックを与えていく。
しかし、実際に電気ショックが与えられるわけではなく生徒側は電流のレベルに合わせた演技をする。
結果として、生徒役から見える場所で電流のスイッチを押していた先生役は、あまりにも強い電撃になる段階で辞退を申し出る人が多かったのに対し、見えない場所に隔離された先生役では、辞退者が半減した。
つまり、「誰が攻撃しているのか」がわからない状態だと攻撃性が強くなる。これは「匿名性」という原理に基づいている。」誰が攻撃しているかバレなかったら、責任の所在が分からない。
SNSなどでも、同様のことが起きていると言える。他にも身近なところでは、普段は落ち着いた人なのにも関わらず、車に乗ると人が変わったように危険な運転をする人にも匿名性が働いていると考えられる。
車に乗っていると、外からあまり顔がしっかりと見えないから。
運転している人の顔がはっきりと見えるような、あるいはどこの誰なのかが周囲にわかるような車が開発されたら、危険な運転は減るんじゃないかと思う。
5つ目の大人の心理…行列に並ぶと、あまり美味しくなくても美味しいと思ってしまうのはなぜ?
料理が口に合わなくても、長い行列に並んで食べた場合は「美味しい」と思い込むことってある。
待っていた分お腹が空くというのもあるが、やはり並んだという事実に納得したいので、「美味しいに違いない」という思い込みが働く。
これを「認知的不協和」と言い、「思考」と「行動」との間に矛盾が生じる場合(不協和状態)、認知を歪めることで「不協和」という不快な状態から受けるダメージを回避しようとする心理だ。
例として、アメリカの心理学者レオン・フェスティンガーの行った認知的不協和に関する実験がある。
被験者を2つのグループに分け、すごくつまらない作業をやり、作業が終わったらまだ作業をやっていない被験者に対して「面白かった」と嘘をついてもらう。
その報酬として、一方のグループには20ドル、もう一方には1ドルを支払う。
すると、実験後に尋ねた作業への評価は、報酬が1ドルのグループの方はつまらない作業を面白かったと評価したという結果になった。
ええ!?20ドルの方がたくさん報酬をもらっているので、評価が高くなると思う。
20ドルのグループは、「つまらない作業を、面白い、と嘘の情報を伝えても、被験者は皆20ドルもらえるのだから、そのくらいいいだろう」と嘘をつくことを正当化できたわけ。
一方で、1ドルしかもらえなかったグループは、つまらない作業を「面白かった」と嘘をつくことに対して見合わない報酬だと感じているため、その不協和から生じるダメージを最小化させるために、実験後の作業への評価について「楽しかった部分もあった」と思い込もうとする傾向があったという。
認知(自分の思考)を歪めることで、「不協和」状態から脱しようとする。
―行動したことに対して自分を納得させるように、そのような心理が働くのだ。