風はどこから来るんだろう!

日中の風の仕組み

夜間の風の仕組み

簡単に言えば、風というのは空気の移動。私たちの住む地球は空気におおわれている。空気は、形もないし、色もついていないので目には見えない。
空気は、温度が上がるとふくらみ、反対に温度が下がると、ちぢむという性質をもっている。

太陽に照らされて温められふくらんだ空気は、軽くなって上昇する。
反対に空の上のほうで冷やされてちぢんだ空気は、重くなって下降する。
そうなると、上昇した空気のあとには、まわりから別の空気が流れ込んでくる。また、下降した空気のあとにも、まわりから別の空気が流れ込んでくる。
このような空気の動きが、風として感じられるというわけだ。

童話は、子どもから大人まで、みんなが楽しむことができる。
読んだり、書いたり、読み聞かせたり、その楽しみ方はさまざまで、すべてに共通しているのは、そこに「心のふれあい」があること。
年齢や性別に関係なく、作者と読者、読む人と聞く人、それぞれの間で言葉が媒介となり、想いが交わる。
童話は、人と人を結ぶ、大切なコミュニケーションツールだといえる。
そんな童話を通じて社会のお役に立てればと考えたJXTG(ENEOSを展開する石油製品の精製及び販売等を行う日本の企業)グループは、受賞作品をまとめた一冊の童話集「童話の花束」を発行し、全国の社会福祉施設や里親家庭、幼稚園などに寄贈。
また、「童話の花束」は、JXTGグループのサービスステーションを運営する特約店の皆様にお買い上げいただくほか、JXTGグループ各社とその役員・従業員にも販売し、その売上金のすべてを「JXTG童話基金」に組入れて、児童福祉施設等の子どもたちの自立を支援している。
第42回(2011年)JX童話賞の中で「中学生の部」で優秀賞の「風のたより」が心に残ったので、ここで、風にちなんだ創作童話を紹介
作者は破魔紋佳さん。

創作童話「風のたより」より。

風のたより

窓辺で口笛を吹きながら、絵本を開いた。わたしの一番好きな絵本。おばあちゃんからもらった宝物。あれから十一年。
友だちの葵と口げんかをしたのは今朝のこと。ちょっとした心のすれ違いだった。
緑の空気を吸いたくて窓を開けると、葉擦れの音がさわさわ聞こえてくる。舞いこんだ風が絵本のページをパラパラとめくる。
飛ばされた柳の葉が一枚、小さく色をそえていた。
わたしは大切に絵本を閉じて、立ちあがった。
やっぱりメールじゃ伝わらない。手紙を書こう。そう思いたって文房具屋さんへ向かった。
レターコーナーで選んでいたわたしは、ふと視線を感じて顔を上げる。ひとつのレターセットが目に留まった。
青い空の中に、虹色の雲が浮かんでいる。それを見たとき、胸の奥深く眠っていたおばあちゃんとの記憶が思いおこされた。
「彩、見てごらん。お空が鱗雲でいっぱいだね。」
「おばあちゃん、見て見て。お空にまどがあいたよ。
あのキラキラしてるのなあに?」
「彩雲だよ。まるで七色の龍が通ったあとみたいだろう。あれを見た人は幸せになれるんだよ。」
あのときとそっくりな雲。きっとわたしと葵を結んでくれる。祈りにも似た気持ちを抱えて、わたしはレジへ足を向けた。
何も聞こえなくなるほど夢中で手紙を書く。宛て名を書きおえてひと息つき、大きくのびをした。気づけば小指が真っ黒だった。
手紙を机の上に置いて、そのままわたしは眠りについた。夢の中で風の音が聞こえた。
翌朝、教室に着いたとたん、葵が小走りで近寄ってきた。
「お手紙、ありがとう!わたしこそごめんね。」
(えっ、まだ手紙渡してないんだけど!?)

風のたより

驚いてかばんの中を探したが、手紙は無い。
(どうなってるの、これ?)
家に帰ると、机の上にレターセットが出しっぱなしになっていた。片づけようと手に取ったとき、水色の小さな紙がそえてあるのに気づいた。そこには金の文字でこうあった。
『本日は弊社の商品をお買い上げ頂き、ありがとうございます。尚、手紙をお書きになったあとは、封筒に宛て名を書き、風の届く場所へ置いてください。自動でお届けいたします。』
「自動で、って『風』が!?」
すごく驚いた。信じられない。でもそれ以上に、興奮で全身が熱く震えるのを感じる。
「次はだれに出そうかな。だれにでも届くはず。だって、風が届ける手紙なんだから。」
わたしは再びペンを取った。
二通、三通、四通……。相手のことを思い、自分の気持ちを文章にする。手紙のおもしろさにわたしは引かれていった。
自分の生活や思い出、普段言えないようなことまで書けてしまう。一字一字に思いを馳せ、相手の心へ届くようにと願う。それがただ楽しかった。
返事が来るのもうれしかった。
毎日学校から帰るとすぐに、ポストを確認しに行く。小さな一喜一憂が日課となっていた。
そして、最後の封筒を使う日がおとずれた。わたしは悩んだ。
手紙ならいつでも送れる。
でも、このレターセットだからこそ、大切な人に思いを届けたい。
虹色の雲を──。

風のたより

わたしはそっとペンを握った。
温かいもので体が満ちていく。紙の上ですべるペンを追って、こぼれた欠片が走る。
口びるが自然と歌をつむぐように、言葉があふれでていた。
裏までびっしりと書かれた手紙を丁寧に封筒に入れ、
ゆっくりと宛て名を書いた。
『おばあちゃんへ。彩』緩慢な動作でペンを置いた。
顔を上げると、クロアゲハが
柳の新芽の周りをじゃれるように飛んでいた。
その様子が
いとしくて思わず微笑んだ瞬間、一陣の風が吹きあれた。
目を開くと、手紙はなくなっていた。よかったと思う
反面、ちょっぴりさみしい気持ちにもなった。
次の日、開けはなした窓の外で、ひとひらの葉が
軽やかに舞っていた。穏やかな風に誘われて、
スーッと部屋に入った。
それは、おばあちゃんからの手紙だった。
『彩、毎日よく頑張っているね。彩の笑ってる顔も泣いてる
顔も怒ってる顔も、おばあちゃんは大好きだよ。』
ご飯がたきあがるにおいがしたと思った。
背中でかいだ、おばあちゃんのにおい。
その葉を、やさしく絵本にはさんだ。
あの日、ふたりで見た空を忘れないために。
今日、学校が終わったら、
あの文房具屋さんへ行ってみよう。
まだ手紙を出したい人がたくさんいる。
届けたい、わたしの思いが。




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